『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第155話

 久しぶりにいい笑顔を見せる母親から受け取った受話器の向こうから妹の声がする。
「お兄ちゃん、元気!またママと喧嘩したんだって」

「まいったな、大したこと無ぇーんだよ、でも、2人で暮らしてると上手く謝れないこともあってな」

「お兄ちゃん・・・・・・私・・・ママになるんだ」少し恥ずかしそうに言う妹の声。

「ほんとか!すっげーな、ほんとかよ!」受話器を片手に興奮する昭太郎は笑顔の母親に目線を合わせる。

「うん、今日ね、産婦人科に行って来たの、そしたら3ヶ月だって」

「ほんとか!やったな、すげぇよ!だからかーちゃん満面の笑みだったのか」

「そうなの?」

「おぉ、すっげー笑顔で受話器渡されたから何かと思ってたんだよ」

「早く帰ってきてよ、出産前に実家に帰ろうと思ってるんだから、お兄ちゃんとママに家にいてもらわないと困るでしょ」

「そうだな」頷きながら応える昭太郎。

「いつ生まれるんだ?」

「予定日は11月23日。その1ヶ月前までには帰って来てもらわないと困るんだから」

「よかったな、おめでとう」

「ありがとう。頑張ってね」

「おう、頑張るわ、じゃ、かーちゃんにかわるな」母親に目配せする昭太郎。

 満面の笑顔がキープされている母親に受話器を手渡した。

かわった瞬間、母親は嬉しそうに勢いよく喋っている。

その会話を横目に玄関を出る。

 外の階段に腰をかけ、ポケットからタバコを取り出した。

「なんか、生きてると、いいことも突然くるんだなぁ・・・なんか久しぶりのいいニュースだ・・・・」

少し肌寒くなった夜を感じながら、煙をふかし、空を見上げた。



 【あの頃の僕はシンプルに生活していた。
曇りの日が続いているような生活だった。
なんとか食べてなんとか寝るという仕事を繰り返していた・・・。
笑顔は気持ちを晴れにする。
笑顔がない日が続くと鬱なってくる。
曇りが続いているときには無理にでも笑ってみると気持ちが変わることに気付いた。
晴れと笑顔は生活には必要なのだ。】

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