『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第159話

 B棟の病室で手術着に着替えた昭太郎。

そこに母親が走って現れた。

 口元を緩ませる昭太郎に目に涙を溜める母親。

言葉無く目で会話する親子。

 
椅子に座り、左手の拳を右手の掌で打ち付ける。

「かーちゃん、今度はできるかな」ボソッと昭太郎が言った。

「大丈夫よ」

「そうだよな」もう一度、左手の拳を右手の掌で打ち付ける。

「大丈夫」言い聞かせるように言う母親。


 静かな時間が流れる病室。


「でも、今度は大丈夫かななんて言ってるのは俺達ぐらいだよな」

「そうね、みんなは1度目がその時だものね」

「誰かに電話した?」

「してないわよ」

「そうだよな・・・ちゃんとするまではできねぇーよな・・・」

「・・・・・」

「でも、今回は大丈夫な気がする、うん、何かそんな気がする」両手を組む昭太郎。

「そうね、あなたいい顔してるわよ」

「なに言ってんだよ」

「パパお願い・・・」掌を合わせる母親の横顔を眺める。

「頼むよオヤジ・・・」
 組まれた両手にゆっくりと額をつける。

 
手術の報告だけでは喜ぶことができない2人の親子は夜中の病室で言葉無く願い続けていた・・・。

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