『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第162話
大騒ぎだったその場がそこに立つ姿で静かになったとき、昭太郎は皆の顔を見まわしながらはじめた。
「本日は遠いところありがとうございます。わたくし、大林昭太郎はオーストラリアで肝臓移植手術を無事に終え、帰国することができました。、今、無事に手術を終え、ここにいることが嬉しくてたまりません。ほんとうに・・・本当にありがとうございました」と選手宣誓をするような調子ではじめたが、後半こみあげる泪をこらえきれず、思っていた半分以上も言えないまま、頭を深く下げていた。
頭を上げると、大きな花束を持った元彼女が泪を浮かべていた・・・。
ゆっくりと歩み寄った由紀は花束を手渡し、昭太郎の耳元で囁いた。
「・・・おめでとう」
泪瞳を見つめた昭太郎は軽く微笑んで頷き
「俺、かっちょええか?」と訊く。
由紀の頷きを確認した昭太郎は
「じゃあ、もう大丈夫だ、ありがとう・・・」と耳元で嘘をついた・・・。
心待ちにしていたこの瞬間、拍手喝采が鳴りやまない。
大勢に隠れるようにいるひとを見つけた。
「あのさぁ・・・俺・・・いや・・・・・あんがと、かーちゃん・・」
歓呼の中、大声で耳打ちした。
【そう、僕は無事に海外脳死肝移植を成功させオーストラリアから帰国したあの日、まだ痛む腹の傷に嬉しさを感じ、皆に会えた感謝そして2度目の人生の重みを感じていた。
しかし、何処かで俯瞰的に自分を見ていた。
この帰国だけを目標に生きてきた僕はこれからの生活に戸惑い、ただ笑顔を絶やさないことに精一杯だった・・・。
あのときの僕は一つの壁を越えて、見えない壁を感じていた・・・】
大騒ぎだったその場がそこに立つ姿で静かになったとき、昭太郎は皆の顔を見まわしながらはじめた。
「本日は遠いところありがとうございます。わたくし、大林昭太郎はオーストラリアで肝臓移植手術を無事に終え、帰国することができました。、今、無事に手術を終え、ここにいることが嬉しくてたまりません。ほんとうに・・・本当にありがとうございました」と選手宣誓をするような調子ではじめたが、後半こみあげる泪をこらえきれず、思っていた半分以上も言えないまま、頭を深く下げていた。
頭を上げると、大きな花束を持った元彼女が泪を浮かべていた・・・。
ゆっくりと歩み寄った由紀は花束を手渡し、昭太郎の耳元で囁いた。
「・・・おめでとう」
泪瞳を見つめた昭太郎は軽く微笑んで頷き
「俺、かっちょええか?」と訊く。
由紀の頷きを確認した昭太郎は
「じゃあ、もう大丈夫だ、ありがとう・・・」と耳元で嘘をついた・・・。
心待ちにしていたこの瞬間、拍手喝采が鳴りやまない。
大勢に隠れるようにいるひとを見つけた。
「あのさぁ・・・俺・・・いや・・・・・あんがと、かーちゃん・・」
歓呼の中、大声で耳打ちした。
【そう、僕は無事に海外脳死肝移植を成功させオーストラリアから帰国したあの日、まだ痛む腹の傷に嬉しさを感じ、皆に会えた感謝そして2度目の人生の重みを感じていた。
しかし、何処かで俯瞰的に自分を見ていた。
この帰国だけを目標に生きてきた僕はこれからの生活に戸惑い、ただ笑顔を絶やさないことに精一杯だった・・・。
あのときの僕は一つの壁を越えて、見えない壁を感じていた・・・】