『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第78話

出発前夜、昭太郎と母親はネオンと渋滞のテールランプに彩られた新宿のホテルにチェックインした。

昭太郎のシングルルームには光隆、勇介、敏哉の男達が集まった。

前向き男は昔話が嫌いだったが、その夜は沢山の思い出話で盛り上がった。

初めて出逢ったときの第一印象からケンカしたこと、東京からチャリンコで神戸まで行ったときの話、遊園地に侵入して逃げ回った話、ナンパが成功したときや失敗したときの話、1週間で4日は船に乗っていた旅行の話。

アホなこと苦しいことを乗り越えてきた結果、俺たちは本当の仲間になったということ、俺たちは変なことばっかりやってきて、色々な経験をしてきた俺たちの人生を誇っていた。

そんなクサイこともその日は話せた。

普段恥ずかしくて言えなかったこともその日は語った。

そして昭太郎は照れくさそうに用意していた手紙を仲間達に読みはじめた。


「勇介へ、おまえが「弟子にしてください!」と言ったときから俺の不良は終わった気がする。おまえの憧れには答えることはできなかったけど、おかげで誠実になることができた気がする。あの頃からおまえは変わらず駄目な奴だけど、おまえといるときの自分は結構好きなんだ、それだけだけど、それは勇介にしかできない。俺ができないって諦めたらネガティブなお前に「何でもできる」って言えなくなるだろ。だから俺は手術を無事成功させて帰ってくる。大林昭太郎」

 その手紙で勇介の頭をはたいた昭太郎はしっかり握手を交わした。

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