『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】

頑張らないことを頑張る

第８１話

　朝陽が空港を南国へと漂わせる。

到着ロビーでは多民族の異国人が足早に行き交っている。

爽やかすぎる気候と英字表記に違和感を覚えながらトランクを引きずる昭太郎はタクシーをつかまえた。

行き先を告げると、少し太めの白人運転手は親指を突き上げてウインクをかます。

　タクシーの窓からはサファリのような大平原が広がっていたが、１５分も走ると景色は一変し、繁華街が見えてくる。

光に反射する大きな川を渡ると高層ビルと洋風建築が融合する街にいた。

スーツ姿でスケボーを滑走させるリーマンを２度見した昭太郎はニヤリとして運ちゃんに話しかける。

地元を伺う質問を繰り返し、たまに「リアリィー！」などと大袈裟な反応を見せる昭太郎は笑っていた。

太腕でパーキングにギアを入れた運ちゃんは「何でここに来たんだ？」と訊いてきたので、一瞬母親と目を合わした昭太郎は「トランスプラント・オペレーション！（移植手術）」と覚え立ての単語を言い放ち、親指を突き上げた。

一瞬真剣な面持ちを見せた運転手は
「ＯＫｉＤｏＫｉ！Ｇｏｏｄ　Ｌｕｃｋ！」と軽く微笑みかけた。


　ＣＩＴＹを少し越えた郊外にプリンス・サンドラ病院はあった。

近代的なデザイナーズ建築のような風貌で構える病院は丘の上にあり、何とかヒルズのように広大な敷地に何棟も建ちそびえていた。

昭太郎は高台でこれから生活する【ラング】という名の街を見下ろした。

「さすが、ワールドワイドな病院はずげぇーな、外人を受け入れてくれる病院はやっぱでっけぇーよ」