好きだけじゃ足りない
空港ロビーで当たり前のように伊織から受け取ってしまった那覇空港行きのチケット。
「いくら?」
「お前には出させねぇよ。だから先に買ったんだろ。」
手の中にあるチケットを見て、伊織を見て、小さくため息を吐いた。
お金は確かにないけど…伊織に出してもらうほど困っているわけでもない。
ジーっと音が出そうな程に伊織を見ても、コイツは目も合わせないし頑なに口を閉ざすし…。
「聞いてくるから良い!」
「あー待て待て待て待て!」
「出してもらうわけにいかないでしょ…コレだって昨日買ってもらったのに。」
両腕をがっちり掴まれたまま見上げてため息を吐いたらちょっとムッとしたような表情でため息を返された。
「その服は俺が勝手にお前に買った。
チケットも…メグの一週間の給料だと思えば良いだろ。」
早口でまくし立てるように言われて思わず頷いてしまう。
そんな私に満足そうに頷く伊織を見て、まぁ良いか。なんて思ってしまう自分に苦笑いを浮かべたままで
「ありがとう。」
と、小さくお礼を言ってみた。