好きだけじゃ足りない

透ける色





「やっぱあったけぇな。」

「ソウデスネ。」

「メグ、まだ怒ってんのかよ…」

「イイエ。」


沖縄の那覇空港に降りるまでの機内ではだんまり。
降りた今では全部片言な言葉。

私なりの嫌がらせだけど、コイツにはあんまり効いてないみたいだ。


嘘ついたわけではなくても、騙された感が気に入らなくてちょっとした反抗期。



「あ、ほら…これやるから機嫌直せよ。」

「……………いらんわっ!」

「可愛くね?メグに似て。」


可愛い、単語だけなら嬉しい言葉もいらないオプションを付けられればただの腹が立つ言葉にしかならない。

コイツはあろう事か…空港のお土産屋さんにあったシーサーの置物を持ち上げてそう言うもんだから余計に腹が立つ。
と言うか、いつ買ったんだろう。シーサー…



「シーサーって守り神みたいなもんなんだって。だからやるよ。

メグの悩みから守ってくれるかもしれねぇしな。」


渡されたお世辞にも可愛いとは言えないシーサーを受け取り、伊織が私の悩みを一緒に悩んでくれていたのがわかった。

悩みが何なのかは聞かないけど、気にしてくれていたのが嬉しかった。


でもね、伊織…
私の悩みはアンタにしか解決できないのかもしれない。


シーサーを見つめたまましばらくは足を動かす事すらできなかった。




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