好きだけじゃ足りない
伊織からの不本意なプレゼントを持ったままようやくタクシーに乗り込み、窓の外を眺める。
少し遠くに見える海は空のような透明な青色で海と空がつながっているような錯覚すら覚える。
「良いとこだろ?」
「うん…すごいキレー…」
隣に座る伊織とはずっと手を繋いだままで、右手は伊織の手と繋がり、左手はシーサーを持ったまま。
伊織を一度も見ないで答えたら頭を撫でられる。
シーサーの事を怒っているとかじゃなくて、あまりにも綺麗な空と海から目が離せなかった。
「伊織…此処来たことあるの?」
「昔な。嫌な事なんて吹き飛ばすくらいの場所だからな…
メグと一回来たかったんだ。」
優しい音色を奏でる伊織を見なかった。違う、見れなかった。
安易にどんな表情かなんて想像できたから。
繋がる空と海を見たまま、あの契約破棄の条件は此処にいる六日間は忘れよう、そう思う。
「泊まるとこも俺が昔使った場所にしてみたんだよ。」
「へぇ…どんなホテル?」
「それは行けばわかるだろ?」
ふと見た伊織は何かを企んだようなにやけ顔で、思わず眉を寄せた私の頭を少し乱暴に撫でる手。
今は乱暴でも何でも、伊織に触れられると言うだけでよかった。