好きだけじゃ足りない
女の人に案内されるままリビングにお邪魔して、失礼だと思いながらも部屋を見渡してしまう。
昔ながらの沖縄らしい民家は安らげる空間を醸し出して私を歓迎してくれているようにも思える。
「すみません、明さん。急にお世話になってしまって…」
「良いのよ。優斗から連絡来てからずっと楽しみにしてたんだから。
伊織君が恋人連れて来るって彼が言ってたしね?」
横で繰り広げられる会話に私は首を傾げた。
伊織とこの女の人、明さんが知り合いなのはわかったけど…優斗って誰だろう。
伊織が私の事を話すって事は親しい人なんだろうけど、さっぱり検討がつかない。
「メグ、この人は佐々木明さん。それに娘さんの優ちゃん。」
明さんと優ちゃんに頭を下げられて慌てて同じように頭を下げる。
さっきから感じる違和感と悪寒。
その原因は隣にいる伊織だ。
いつもとは全く口調が違う。それに悪寒を感じて、鳥肌が立つが笑顔を繕って明さん達を見た。
「高波萌です。お世話になります。」
「こちらこそ。優とも年は変わらないみたいだから仲良くしてやってくれると嬉しいわ。」
二人に綺麗な笑顔に私も笑顔で返した。
沖縄滞在中の宿主とは仲良くやれそうだとホッと肩を撫で下ろし、窓から見える突き抜けるような蒼の空を見た。