好きだけじゃ足りない




「はぁ…」

「メグちゃん、まだ残る?」


仕事内容なんてほとんど頭に入らなかった。
伊織からの言葉が何度も何度も頭の中を駆け巡って、どうにもならなかった。

いつの間にか過ぎていた定時にも気付かない私に所長はにこやかに話しかけて来た。



「あ…もう上がります。」

「…今日、元気なかったけど悩み事かい?」


所長には私が元気がないように見えたのだろうか…。
そりゃ、多少はため息多かったかもしれないけれど…そこまであからさまに態度に出したつもりはないんだけどな…



「帰ってゆっくり休んで…明日からまた元気に出てきてくれれば良いからね。」

「…………ありがとうございます、所長。」


二年前から私はこの人に救われっぱなしだ。
ヤケクソになったみたいな私を受け入れて、今も働かせてくれている。

感謝してもしきれない。



「お先に失礼しますね。」

「あぁ、お疲れ様。また明日ね」


この、いつもの

また明日。

が、私にとって救いになる。


荒んだ心もそう言われるだけで少しは救われている。

だから私は今こうしていられるのかもしれないね。




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