好きだけじゃ足りない
明さんが料理をする後ろで途切れる事なく会話する私と優ちゃんはさぞかし煩いだろう。
お互いの年を聞いたり、仕事の話をしたり、恋の話をしたり…
同年代と言うか同じ年だからか会話を苦には思わなかった。
「へぇ…じゃあ優ちゃんは彼氏いるんだ?」
「うん!すっごいカッコイイんだよ?伊織さんよりも!」
にこにこと可愛い笑顔にまた癒される。
でも、やっぱり私も伊織が大好きなのか…伊織よりもカッコイイと言われた所でちょっとだけムッとしてしまう。
「伊織だっていい男だから。」
「伊織さんは大人のいい男でしょ?私のとこは年相応のカッコイイだからなぁ…あ、やっぱり伊織さんのがいい男かも…?」
うーん、と悩む優ちゃんの表情は本気で悩んでいるように眉を寄せていて吹き出すように笑った。
誰だって自分の恋人が一番なのは当たり前なんだからそこまで悩む必要ないのに…なんて言わない。
「……同じくらいカッコイイで良いんじゃない?」
「あ、そっか。そうだよね!」
「うん。そうそう。」
この悩みはたぶんいつまでも解消されないから無難な所で手を打つのが良い。
ダイニングテーブルの上に置かれたヒヨコの置き物を突きながら心は穏やかだった。