好きだけじゃ足りない
言葉の重み
皿にテンコ盛りにされたゴーヤ達を青い顔色で完食した伊織は偉いと思う。
「……大丈夫?」
「無理……絶対嫌がらせだろ、あれ。」
ゴーヤ地獄から抜け出した伊織と私は2階の空いた部屋を借りて、今は寛いでいる。
部屋に着くなり、着替えもしないで畳に大の字で倒れ込んだ伊織は哀れとしか言いようがないんだけど…。
「明さん…怒らせる事なんかしてねぇのになぁ…。」
「あはは……うーん、明さんなりの歓迎だったんじゃないかな………たぶん。」
たぶん、と言うよりそう思いたいと言う願いだったりもする。
あれを素でやってしまうなら明さんは絶対に怒らせてはいけない人に分類されるし。
苦笑いをしたまま、伊織の隣に腰を下ろし天井を見上げる。
ご飯を食べたら話をすると決めた。
でもやっぱり…怖いと言う気持ちは拭い去る事なんてできない。
「……どうした?」
「え?」
「なんか悩んでんだろ。」
思考から連れ戻された私の隣にはいつの間にか起き上がった伊織が心配そうに私を見ている。
「………あの……話したい事あって…」
「別れ話以外ならなんでも聞く。」
目尻を下げて、髪を撫でてくれる伊織に少しだけ安心した。
小さく息を吸って、それを吐き出す。
「あのね……」
言葉にしなきゃ…何も始まらないんだ。