好きだけじゃ足りない
「なぁ、メグ。」
「なに…?」
「話すって決めたのはお前が悩んでた事と関係してんのか?」
真剣味を込めた声に肩をびくつかせてしまった。
それが肯定の意味を持つなんて見るに明らかなのに、目の前にいるコイツに隠し事なんか最初からできないんだから仕方がない。
今まで専務の事がばれなかったのが不思議なくらいだ。
「お前ずっとなんか隠してんだろ。
俺とまた一緒にいるようになってからずっと。」
あぁ、やっぱり隠し事なんて無理だったんだ。
目の前の伊織を見る事なんてできないけど、今どんな表情かなんて見なくたってわかる。
今までにないくらい真剣な表情をしてるんだ。
握りしめた手に力を込めて、それをただ見た。白くなる拳なんて気にならないくらいに心臓がドクドクと早鐘を打って暑くもないのに汗が吹き出す。
「……なに隠してる?」
「な、にって…」
「何か隠してるだろ。俺が気付いてないとでも思ってたのか?」
あまりにも真剣味を帯びた声に視線をゆるゆると伊織に向けて時間が止まったように体が硬直した。
伊織は本当に気付いていたんだって疑う事もできない表情に唇を噛み締めた。