好きだけじゃ足りない
「自分でも信じられない位…
伊織を愛してるから。」
視線を足元に下げて、だから怖かった、と繋ぐ自分の言葉に苦笑いが漏れてしまった。
捨てられそうになって、初めて言葉にするなんて…愚かな自分を呪いたい。
サクリと音を立てる砂の音に視線をゆるゆると伊織に戻して、それこそ息が止まるかと思った。
「い…おり…?」
「もっかい。」
「…は?」
「今のもっかい言え。」
見上げた先には目の前で私を見ている伊織。
暗くても嫌な位にわかる。
ほっぺたに涙の跡。
泣く伊織なんて出会ってから一度も見た事なかった。
それくらい、私の中の伊織は強くてカッコイイ奴だった。
「言えよ…メグ。」
目尻から滑り落ちる涙は見た事がないくらい綺麗で言葉すら出てこなかった。
それでも言葉を催促する伊織に私は眉を下げてしまう。
「………言わない…。」
「言えって。」
「…言わない!」
肩に触れた暖かい手にピクリと体を揺らしながら、伊織を見ないように視線をさ迷わせながら無駄に意地を張る私は一つも成長してないのかもしれない。