好きだけじゃ足りない
伊織が居なかった三年間は生きてるのか、死んでいるのかすらわからないまま過ごしていたから。
まるで止まった針のような時間を過ごしていた。
でも、伊織とまた出会ってようやく針が動き出したんだ。
止まらない針をようやく今、掴んだのに手放すなんて私にはできないんだから。
「なぁ、メグ。」
「―…ん?」
「……男、誰?」
にんまりではなく、にっこり。
視線を合わされてどうにも動けない私は白状するしかないのか。
にっこり笑っているはずなのに、目は全く笑っていない。
冷や汗が背筋を伝い流れる感触に小さくため息を吐いた。
「誰か…言うよな?」
「……言わな………………言います、はい…。」
この判断が正しいか、そうでないのか…。
今の私にはわからなかった。
ただ一つ言えるのは、
この返事で急速に周りの空気が変わると言う事だけだった。