好きだけじゃ足りない



「水族館なんて何年振りかなぁ…」


借りている部屋に戻って明日の予定を頭の中で組み直す。

水族館と言う選択肢はなかったけど、それでも楽しみな私は隣にいる伊織がどんな表情をしているかなんて見もしなかった。



「……なぁ、メグ?」

「ん?あ、伊織も明日一緒に行け……るんだよね…?」

「あぁ、行く。行くけど、その前に話す事あるだろ?」


漸く隣を見て、明日の予定とかそんなのは当たり前のように遠くへ飛んでしまう。

――…忘れてた…。


砂浜で専務の事を話すと約束してしまったんだ。

その話を待ってかはわからないけど伊織はこれ以上ないって位に真剣な表情で射るように私を見ている。



「聞かせてもらおうか?」

「いや……はい…。」


いい男の真面目な表情が此処まで恐怖に駆られるなんて想像すらしていなかった。

ヒクリと引き攣ってしまう口許に力を入れてごくりと一つ唾を飲み込んだ。



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