好きだけじゃ足りない
安らぎの陰
カーテンの隙間から漏れる陽射しにまだまだ重い瞼を開く。
「おはよう。」
「…………何でいるの。」
「お前…相変わらず寝起き悪いなぁ。此処、明さん家。」
瞼を開けた先には至近距離に心なしかにやけた伊織。
――…あぁ、沖縄にいるんだ。
なんていまさら理解しながら意味はないけどにやける伊織の足を軽く蹴っ飛ばした。
「痛ぇし…足癖直せよ。」
「うっさい……見んな。」
変な事はされないにしても、一晩中ずっとくっついて離れない伊織をようやく覚醒しだした体で強制的に退かせてパジャマから洋服に着替えようと鞄を持つ。
「此処で着替えれば?」
「………慎んで遠慮します。
伊織も早く着替えなよ。」
未だに布団に包まって出ようとしない伊織をジトリと睨みつけても睨まれた本人はヘラっと笑って何も答えない。
「ちょっと…早くしないと水族館行けないじゃん!」
「お前、今何時かわかってんのか?」
呆れたような表情をする伊織に首を傾げながら時間を示してくれる壁掛け時計に視線を移した。