好きだけじゃ足りない
それぞれのカタチ
沖縄に来て五日。
水族館に行ってからはもう三日も経つ。
それでもあの時の電話の声が耳から離れずに終始ぼーっとしてしまう私を伊織だけじゃなくて明さんや優ちゃんまで心配してくれる。
それが有り難いような、申し訳ないような複雑な心境だった。
「メグ?大丈夫か?」
「え?あ……うん、大丈夫大丈夫。ごめん。」
今日が沖縄滞在の最後の日。
伊織と二人でお土産を買いに来ていてもやっぱりぼーっとしてしまう私に眉を寄せる伊織が視界に入る。
水族館で電話を終わらせて戻ってすぐに誰からの電話か、そう聞かれても答えなかった。
違う、ただ答えられなかった。
あの電話の相手…如月彬との取り引きだった。
その取り引きが吉と出るか、それとも凶とでるか…。
今の私にはわからないけど、吉と出てくれる事に賭けたんだ。
「さっ、お土産選ばないとね!」
わざとらしい口調に余計に眉を寄せる伊織に苦笑いしながら目の前にある沖縄らしい建物の店へと逃げ込んだ。