好きだけじゃ足りない
終焉は迫り来る物

持ち越した時




"別離"や"別れ"は書いてしまえばたった二文字でも、抱える痛みや重みは二文字なんかじゃ表せないものなんだ。





「お世話になりました。」

「また来てね?私も遊びに行くから!」

「ありがとう、優ちゃん。絶対また来る!」


沖縄滞在もあと1時間。
空港にまで見送りに来てくれた明さんと優ちゃんに深く頭を下げて寂しい気持ちにほんの少しだけ鼻の奥がツンとしてしまう。

滞在期間は短くても、二人に教えられた事は山ほどあった。



「伊織君、体に気をつけて。それと…頑張ってね?」

「ありがとうございます。また来ます、二人で。」

「楽しみにしてるわ。」


隣で話す伊織と明さんは清々しい笑顔だけど、正直今の私は清々しいとは言えない気持ちだった。

伊織が昨日言っていた事や、水族館に行った日に掛かってきた電話。
いろんな事が頭の中を終わりなく延々と回っている。



「萌さんも…元気でね?」

「はい。本当にお世話になりました。」

「頑張りなさい。自分に正直なのが一番よ?」


明さんは最後の最後まで私の気持ちをわかってくれているのかもしれない。
自分に正直、それに曖昧に笑ってまた頭を下げるしかなかった。



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