好きだけじゃ足りない
霞んでしまう視界の端に専務が薄っすらと笑っているのが見えた。
「やり方?なんの?脅した事?それとも………
無理矢理抱いた事?」
口許に笑みを浮かべたままの専務にビクリと肩を揺らしてしまった。
無理矢理抱いた、その言葉にもう何ヶ月も前の出来事がまざまざと蘇って体が小刻みに震えてしまった。
「でもさー…最初は無理矢理でも最後は違うよね、メグちゃん?」
「――…そん…っな事ない!」
「ふーん…じゃあいっちゃんの前で全部話そうか。今までどこでどうやってどんな風にセックスしたのか。」
ニヤリと厭らしく笑う専務にさっきまでは消えていた恐怖が蘇ってしまった。
ガタガタと震える体をどうする事もできなくて、目尻から流れる涙を拭うことも、専務から目を逸らす事もできなくなってしまった。
「覚悟すらないんじゃない?」
「っ…、」
「いい加減にしろよ!メグがお前に何したんだよ!」
ガチャン―と派手な音を立てて立ち上がった伊織にすら体が震えてしまう。
震える指先で目尻に溜まる涙を拭い、もう一度専務を見て…それこそ言葉が出てこなかったんだ。