好きだけじゃ足りない
恋なんて二度とするもんか、ってそう思ったのは五年前。
それを覆したのは二年前。
「メグ、これ…」
「高波です。英部長。」
「…………メグ。これも頼む」
「だから高波です。」
三年前から多分状況は何一つ変わっていない。
相変わらず、伊織とは変わらず一緒にいるけど…
当の伊織は円香さんとも別れていないし、私とは表向きはビジネスパートナーとしている。
――…完全にばれてるだろうけど。
「何怒ってんだ?」
「怒ってません。今は仕事中ですから。」
私のツンツン具合も変わらないって言われるけど、自分ではきっとこれくらいが調度良いって思う。
ドライな関係とは言えないけど、今のままでも良いって漸く思えるようになったから。
「なぁ、」
「部長、早く仕上げて下さい。ただでさえギリギリなんです。」
「……わかったわかった…やれば良いんだろ。
――…後で覚えてろよ。」
小さいため息と同時にようやくパソコンに向き直る伊織の最後の言葉に口許を引き攣らせてしまう。
小さく…なんて言わない。
盛大なるため息と共に視線を伊織から外し、総務課の唯一の出入口であるガラスのドアを見て、口許を緩ませた。