好きだけじゃ足りない
「それで…まだ好き?」
「ふふ…内緒よ。
さぁ、ご飯にしよっか。」
ねぇ、伊織?
貴方に伝えたい事はたくさんあるの。
「あ、お母さん!」
「なぁに?」
「電話で最後、なんて言ったの?」
「それはね………―」
ダイニングチェアに座ったままの梨乃に苦笑いを込めて。
「「好きだけじゃ足りない」」
被る声にまた口許を緩めた。
「お帰りなさい。」
「ただいま、客連れてきたぞ」
「ん?
いらっしゃい…円香さんにマスター。」
好きだけじゃ足りない、貴方へ
ありがとうを、君へ。
fin.