好きだけじゃ足りない
始まりの合図は突然に
始まりの一日
何なんだろうね、この状況。
どうして私は、こんな場所にいるんだろう――…。
「メグ…」
「っ、何よ……新郎がこんな場所にきて良いわけ?」
私の馬鹿…。
素直になんかなれないのは昔からだけど、なにも今そんな態度取らなくたって良いじゃん。
今日は……貴方の晴れ舞台なのにね。
「メグ。」
「………呼ばないでよ。
裏切り者…。」
違うよ。
こんな事がいいたいんじゃないんだよ。
ちゃんと笑って
"おめでとう"
って言うつもりだったの…。
貴方が大好きだから、ちゃんと笑って言うつもりだったのに。
「………似合ってるね、白いタキシード。王子様みたい。
円香さんもすごく綺麗だったね、真っ白のドレス着て…、元が綺麗だとやっぱり何着ても似合うのかな?羨ましいね。」
王子様みたい、って言うのはほんと。
でも…羨ましいはウソ。
それでも言わなきゃいけない。
貴方を困らせたくない。
ちゃんと笑って"おめでとう"を言わなきゃ…。
「……おめでと………伊織。」
「…………あぁ…」
ちゃんと笑えてた…?
ねぇ、私偉いでしょ?
ちゃんと"おめでとう"って言えたんだよ?
だから、褒めてよ。
いつもみたいに頭優しく撫でて、優しくて甘い声で
「偉いな、メグ」
って言ってよ。
ねぇ、伊織……。
今日、私の大好きな人は
私ではない女と永遠を誓った。