好きだけじゃ足りない
「な…で…っ、なんでわかんないのよアンタはっ!」
わかってない。
私は伊織に離婚なんて求めてなんかいないし、昔みたいにいつも一緒にいたいなんて求めてない。
……はずだ。多少は一緒にいたいとか思うけど…
でも、昔みたいに付き合ってるわけじゃない今は伊織に何かを求めるなんてできないんだ。
「じゃあ言えよ!メグの考えてる事全部言ってみろよ。」
「――…っ言えるわけないじゃん!言って何が変わるの!?」
初めて人気がなくてよかったと思った。
車の中で怒鳴り合う大人二人なんて興味を引く物以外の何物でもないだろうし。
いい加減止まって欲しい涙は止まる気配すらなくて、しゃくり上げながら伊織を睨みつけた。
「一緒にいたいならそれで良いだろ!一緒にいたくないなら俺はメグの前には二度と姿見せない。
メグはどうしたい…?」
やっぱり勝手だよ、伊織…。
どうして伊織が寂しそうなのよ。
それに姿見せないなんて無理じゃん。取引先の部長なんだから…
「俺は…メグの気持ちが知りたいんだ。」
「………気持ち…?」
「メグが今どう思うか。
俺とこれから先…会いたいのか、会いたくないのか。」
これから先…?
そんなの決まってる。
三年前から決まってるんだよ。
私の気持ちなんて。
それでも意地っ張りな私はそれを素直に言うなんてできっこないんだから。