好きだけじゃ足りない
「聞かせろよ。
メグの本当の気持ち。」
真っすぐに私にはぶつかってきてくれる。
嘘偽りのない言葉を私にはくれる。
それが、どんなに嬉しい事なのか…伊織は気づいているだろうか。
「………―好きだよ。
悔しいけど、伊織が好き。」
「なら最初から言えよ。それで丸く納まるんだから。」
――…全然丸く納まらないけど。
まずさ…根本的な問題が大きすぎるからね。わかってんのかな、コイツは…。
「円香の事は俺がどうにかする。仮にも妻だからな。」
"妻"と言う漢字にすればたった一文字の言葉は今の私にはずっしりと重たい物だ。
「――…別に、私は伊織には何も望んでないから。」
「は?」
「だから……付き合いたいとか…昔に戻りたいとか、ましてや…結婚したいとか望んでない。」
や……多少は望んじゃったりするけど、私にも一応モラルはある。
伊織がなんて言おうと、世間一般でそんな事が許されないのもわかってる。
「たまに…私が伊織の会社に行って、顔見れるだけで良い。」
「―…それはお前の勝手だろ。
言っておくけど、俺はお前を離す気なんて端からないから。」
真っすぐなのは良い。
カーブとかスライダーとか、曲がりくねった言葉よりストレートな言葉のが解りやすいけど……
真っすぐすぎるっ…!
たまにはカーブも投げようよ…。
「何?お前は俺がそれで…はい、そうですか。って納得するとでも思ったわけ?」
「………………思わない。」
納得するはずがない。この男が。
ドSで、変態でチョー我が儘。
それでも、社会人として確固たる地位があるのはコイツの外面が異様な位に良い上に、この黙ってれば優しそうな顔のせいだろう。
「……なんで私…こんな男好きになったんだろ…。」
「はぁ?そりゃ…運命だろ?」
本当に…なんでだろう…。