好きだけじゃ足りない
救世主になりうる一人
営業スマイル
誰もいない会議室に押し込められてどれくらい経ったか…。
未だに私は伊織の腕の中で、見られたらまずいと暴れても今現在も進行形で腕の中。
「伊織……ほんと離して…」
「却下。」
「見られるって…」
「別にいい。見たい奴には見せればいいだろ。」
いや、良くないでしょ…。
さっきまでは泣きたい位辛かったのに今は目の前の伊織に呆れるしかなかった。
「だから良くない!」
「大丈夫だって。」
何が大丈夫なのかを教えていただきたい。
私からすれば何も大丈夫な要素はない気がするけど…
「ちょ…伊織!!」
「お前……静かにしろよ。」
「できるか!!」
私の背中にあったはずの手がいつの間にか、腰にあるし…
何より……顔近っ!
徐々に徐々に近付きつつある伊織の無駄に綺麗な顔を左手で押し退けようと押してみても、あんまり効果はなかった。
―コンコン…
「……開いてるよ。」
「え……馬鹿ですか、アンタは!!」
この体勢…、今にもキスできそうな至近距離プラス腰に回ってる腕。
誤解……ではないけど、疑わしい事この上ないはずの体勢。
「失礼致します……、」
「あぁ、……何かあった?」
「…部長、その体勢は…?」
部屋に入ってきた女性社員は頬を赤くしながら、私と伊織を凝視している。
――…逃げたい…今すぐ!
「これ?………内緒。」
何言ってんだ、コイツ!
まるで疑って下さいと言うような言葉を易々と言って…。
何がしたいの、伊織は…。