好きだけじゃ足りない
「お前は何も気にしないで俺の隣で笑ってりゃ良いんだよ。」
当たり前のようにそう言う、けどね…それができないのがわかってるの…?
何も気にしないで伊織の隣で笑っていられればそれだけで幸せなのかもしれない。
でも、
どうあがいたって月は太陽にはなれないし…
どうあがいたって日蔭は日向にはなれないんだよ。
それが、私なんだ。
「日蔭は日向にはなれない…」
「俺は日向より日蔭が好きだけどな。暑いより寒い方が好きだし。
メグは何も悪くねぇ。気にしないで笑ってろ。
こうしてんのが罪なら、俺が全部請け負ってやるよ。」
何なんだろう…コイツは。
欲しい言葉を当たり前みたいにくれて…欲しい愛情を惜しみなく与えてくれる。
伊織は、どこまで私を溺れさせれば満足するの…。
「一人で無理な事でも二人ならできるかもしれねぇだろ?
まぁ、俺はお前に罪を背負わすつもりなんてねぇけどなー。」
私は女でいる事が嫌でたまらなかった。もしも私が男だったら伊織から離れる事だってなかったのにって。
でも…私が男だったら、伊織とこうして一緒にはいなかったのかもしれない。
こうして、暖かい腕で抱きしめてもらう事もなかった。
「……泣き虫。」
「う、るさいっ…誰のせいよ!」
伊織と一緒にいるだけで、強くも弱くもなれるなんて…
私ってこんなに乙女だったんだなぁって思う瞬間。