好きだけじゃ足りない
流れる月日と閉ざす口
言えない言葉
伊織と再会して、約七ヶ月。
七ヶ月の間、特に変わる事もなく週の半分は私が伊織のマンションへ行く日々が続いている。
相変わらず円香さんに知られる事もなくて。
それは…あの専務との関係も否が応にも続いているのを意味していた。
「…―……グ…メグ!」
「――…え?」
「何かあったのか?」
今現在も私は伊織のマンションにいて、表面上は変わらずに伊織と過ごしている。
日に日に円香さんへの罪悪感と、伊織に嘘を付いて裏切っていると言う罪悪感は消える事なく膨らんではいるけど。
「何もないよ。ごめん、ボーッとしてた。」
「大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。それより…何だっけ?」
ふかふかの座り心地抜群なソファーにくっついて、腰に手を回された状態で笑顔を取り繕う。
多分、ううん…絶対に伊織は何か気付いているけど、深く追求されない事に安堵の息を吐いてしまう。
「伊織?」
「あー……来週、連休取っとけよ。」
「は?連休?なんで。」
相変わらず突拍子のない伊織にパチパチと瞬きを繰り返せば、優しく唇に降って来る体温に口許が緩んでしまう。
「マジで聞いてなかったな、お前は。」
「……ごめん。」
「気にすんな。
来週から出張だから。お前一緒に連れてくから。」
何の抵抗もなくとんでもない事を言う伊織に小さくため息を吐いて、ジトッと見上げても意地悪い笑顔で私を見るコイツにいつも負けてしまう。
「沖縄。行きたくねぇ?」
「………………行きたい。」
ほら、すぐ負けてしまう。
でもそれで良い。
少しでも一緒に居られるなら、私は仕事をやめろって言われても頷いてしまいそうだ。