好きだけじゃ足りない
だらだらと布団に包まったまま戯れて、お昼前にようやくベッドを出た。
「いいわ…その格好。」
「は?」
ベッドから出て、そこらへんにあった伊織のTシャツを借りて身につけた途端に目の前のコイツはにたにたと笑いながら私を見てきた。
「……なに?」
「いや、そそる格好だよな。サイズ合わないTシャツだけ…」
「…………っ変態!!」
それこそ鼻の下を伸ばしているコイツの頭をあらん限りの力でひっぱたいて睨みつけてやる。
「―ってぇな…何すんだよ。」
「うっさいわ!アンタが変態発言するからだ!」
何なんだろ、ほんとに…。
私とコイツには甘い雰囲気は似合わないと言う事なんだろうか。
この変態発言で昨日着ていた服に着替えるか迷いに迷って、結局やめた。
ビジネススーツを着ていたら肩が凝るから、なんて正当な理由をこじつけながら。
実は伊織が喜びからこのまま、なんて絶対に言ってやらない。
「メグー」
「…何?」
「コーヒー煎れて。」
寝室からリビングに移った途端にそう言う変態、もとい伊織にため息を吐きつつもキッチンに向かってしまう自分が少し情けなかった。