好きだけじゃ足りない


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「メグっ!」

「――…何か?…英部長。」


名前を呼ばれたって取り乱したりしない。

此処は、私の勤める印刷会社ではない。
彼がいる、彼のいるべき大切な会社なんだから。



「――…元気、だったか?」

「………プライベートなお話は業務中はしない主義です。

用がそれだけなら、失礼させていただきます。」


ダメ…駄目だ。

近くにいたら駄目だ。


私が私じゃなくなる…。



「話がしたいんだ…」

「っ私はありません。」

「メグ!」

「――…っいい加減にしてよ!

もう…伊織と私は何の関係もないんだからっ!」


駄目だね、本当に。

昔から…彼の、伊織の前では私が私じゃなくなるんだよ。

取引先の部長なのに、部長としてなんか見れなくなる。



「…メグ……っ俺は」

「失礼します。」


聞いては駄目。

聞いたらきっと後戻りなんてできなくなってしまうから。


一秒でも早く、伊織から離れなきゃ後戻りができなくなる。




―――…伊織は私といるべきじゃないんだよ…?




伊織が私を呼ぶ声を聞かないふりして、会社の外に出る。

外は憎らしいくらいに快晴。






あぁ、なんて最低で最悪な再会なんだろう。






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