好きだけじゃ足りない
「すぐにとは言わないよ。俺だってそこまで鬼じゃないしねー。」
平然と円香さんに全てをカミングアウトしろ、なんて言う男は鬼じゃない。悪魔だ。
それを面白がってゲームのように考えているんじゃないかって思うだけで鳥肌が立つ。
「二週間、時間をあげる。その間は俺は君に何もしない。
ただし、できなかった時は俺が話してゲーム終了。」
「……っ卑怯者!」
「なんとでも。
アンタには俺の気持ちは死んだって理解できないんだからな。」
冷たい視線と、冷たい言葉に息が詰まりそうだった。
もしかするとこの男は私が考えるような愉快犯じゃないのかもしれない。
それでも悪魔には変わりはないのだけど。
「で。やるの?やらないの?」
「っ、やるしかないじゃない…!」
そうだ…、私がやってもやらなくてもどの道全部この男はばらすつもりなんだ。
私に残された選択肢は七ヶ月前と同じようにたった一つしかなかった。
「楽しみだね。二週間後。」
最初から私はコイツの駒でしかなかったんだ。
ただゲームを有意義に進め、ゲームを楽しむためのただの駒の一つでしかない。
可笑しそうに笑うコイツを見ていたくなくて、立ち上がりすぐに席を離れた。