好きだけじゃ足りない



「答えは?」


腰に抱き着いた私を力強く抱きしめ返してくれた伊織に何度も何度もただ頷いた。



「…っ…好き…愛してる…っ!」

「やっとだな…やっとメグから聞けたな。」


ただ、愛してると言う言葉だけでこんなに喜んでくれるならもっと早く口にすればよかったのかもしれない。



「…………メグ?」

「ん?なに?」

「あー…うん。」


抱き合って、ちょっとしんみりして、良いムードの中で歯切れの悪い伊織に首を傾げ見上げれば気まずそうに苦笑いをする顔が見えて、嫌な予感がした。



「いや………コレ…、」

「っ…アンタは…!ムードを少しは汲み取りなさいよ!!」


苦笑いを浮かべたまま伊織が指差した先を視線で辿って、恥ずかしいやら腹が立つやら…複雑すぎて言葉にできなかった。



「仕方ねぇだろ。これは生理現象だ!」

「威張って言うな!!」

「良いじゃねぇかよ……こうなんの、メグにだけだし。」

「っ………馬鹿伊織っ!」


ムードもへったくれもないコイツのどこがいいか…、そんなの理屈じゃない。

むくれて口を閉ざしたまま唇を尖らせれば苦笑いのまま降ってきた伊織の顔に反射的に瞼を下ろす。
唇に感じた暖かさにむくれていた気持ちは意図も簡単にほだされてしまう。



――…伊織とはケンカもろくにできないかも…。



唇に暖かさを感じながら、頭の片隅でそんな事を思ってしまった。




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