初恋と流れ星
苦しいくらいに心臓が高鳴っているのは、長い階段を登りきったせい?
それとも目の前の人を見たから?

山を登ってきたわたしに、その人も気が付いた。

「え?もしかして森野?」

わたしのこと、覚えてる。

「倉吉くん……」

二人は昔と変わらず、互いを名字で呼び合った。

「久しぶりだね」

「うん……、10年ぶりかな」

夢にまで見た再会だが、ぎこちない雰囲気が流れる。
身体がほてって赤面しているだろうけど、まわりの暗さがそれを隠してくれている。

倉吉くんの表情も暗くてよく見えない。
どんな顔をしてるんだろう。

「星を見に来たの?」

「うん。さっきラジオで流れ星が見られるって聞いたから」

「俺も見に来たんだ」

「……」

次の言葉が返せず、沈黙が流れた。

あんなにいろいろ話したいって思っていたのに、聞かれたことに答えるだけで精一杯なくらい、心臓の高鳴りが止まらない。


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