DislikeMan~男なんて嫌い~
「薪坂さんの病室は確か……206だったっけ?」
独り言を呟きながら、206号室を探す。
「あった……」
なんとなく、重苦しい気分になりながらも病室のドアをノックする。
ガラっとドアが開いて、中から出てきたのは知らない女性。
あわてて頭を下げ、小声で"失礼します"と呟くと、その女性の脇をすりぬける。
「じゃあね、洸季。また来るわ」
その女性は薪坂さんに声をかけて出て行った。
誰だろう、今の人。
薪坂さんのお姉さんかな?
でも、私が知ってるバイオリニストのお姉さんの印象とは違ってたような…。
「……あ、来てくれたんだ。そこ、座ってよ」
無理やりにも見える笑顔を見せて、薪坂さんはベッドのそばの椅子を指差した。
「あ…うん、ありがとう」
言われたとおり、椅子に腰掛けて俯く。
少し椅子が暖かいのはさっきの人が座っていたからだろうか。
「ねぇ……どうして、早苗に私を呼んでって頼んだの?」
さっきの女の人のことよりも、まずそれが気になった。
「え?…うーん、なんでだろうなぁ」
少し考え込むそぶりを見せた薪坂さん。
理由もなしに、私を呼んだわけでもあるまいに。