DislikeMan~男なんて嫌い~
なにも言わない私を不思議に感じてか、彼は腕を解くと私の前に回り込んだ。
「大丈夫?……そんなに気持ちよかった?」
「なっ………」
冗談なのは顔を見て分かったけど、また恥ずかしさが蘇って来てガバっと立ち上がった。
「も、戻りますよ、卿渓さん!!」
しどろもどろになりながらも、なんとか言葉を発して彼を促す。
「あいよ」
クスクス笑いながら後ろから駆けてきて、パッと手を取る。
……なんかやられ慣れて驚きもしなくなったわ。
これも一つの成長よね、とか思いながら先ほどまでの個室へ戻る。
「…あ、お帰り、恋歌。ちょうどよかった、そろそろお開きにしようかって言ってたとこ」
私たちが手を繋いでいることには特に触れず、幸せそうな笑顔で早苗が迎えてくれた。
「あ、そうなの?…私はいいけど」
というか、早苗は早く城西さんと2人になりたいだけでしょうよ。
心の中で突っ込みを入れて、他の面々を見る。
「うん、俺も別に」
「えー…俺もうちょっと恋歌ちゃんと居たいなぁ…」
「うっせ、洸季。…俺もいいよ」
すり寄ってくる薪坂さん以外は、特に異論もなさそう。
「じゃ、俺たち先に失礼するよ。恋歌ちゃん、またね」
城西さんも早く帰りたいのか、みんなの意見がまとまると同時に、早苗を手を引いて2人は出て行った。