DislikeMan~男なんて嫌い~
夜6時50分。
私は約束のベイカシックスに居た。
ベイカシックスはビジネスホテルの名前で、駅の目の前にあるので、出張してきたサラリーマン、出張帰りのビジネスマンなどが多く泊まっている。
そのホテルのロビーは、待ち合わせにも使われることが多い。
テーブルと椅子がセットになっているのが2組、ただ椅子だけで置いてあるのが3つ、置かれている。
玄関が見えて、椅子だけで置いてある方に座って、春瀬を待った。
あいつが私を呼び出した理由はまったく見えなかったけど、よくない話であることはなんとなく感じていた。
ウィンと自動ドアが開く音がして、パッと顔をあげれば、一昨日会ったときと変わらない雰囲気の春瀬がいた。
ちょっと周りを見渡して、すぐに私の姿を認めると、ニタッと笑って近づいて来た。
立ち上がりもせずに、彼が隣に座るのを待った。
だけど、春瀬は座らずに私の目の前に立ち止まっただけだった。
「…よぉ、恋歌。ほんと、いい女」
会って早々それかよ。
心の中で突っ込みを入れて、ため息を吐いた。
「何の用なわけ?」
冷たく返せば、ハハッと笑った。
「来いよ」
私の腕を取ってずんずんと歩く春瀬は、明らかにエレベーターに向かっていた。
「ねぇ、どこ行くの」
腕を振り払おうとすると、すごい力で掴まれていて、離れなかった。