天使の足跡






クラス全員分のノートと出席簿を抱えた癒威は、軽快に階段を上がっていた。


(早く三谷のところに戻らなくちゃ。さっきのパン、丹葉に全部食われてる気がするな)


そんなことを考えると、俄然、足に力がこもる。


(急がなきゃ)



2階と3階の踊り場に差し掛かった時、床に黒い影が入り込む。


段に落としていた視線を上げた。


そこに立ちはだかっていたのは、八杉をはじめとする3人組。


癒威は半歩退いた。


「八杉くん……?」


癒威の声には答えず、じりじりと歩み寄ってくる。


反射的に癒威も身を退くが、壁に背がついてしまう。


今にも胸倉を掴まれそうな距離に八杉が立ち、癒威のつま先から頭の先まで睨みつけた。


「聞いたぞ。お前、便所じゃいつも個室使ってんだって?」


3人は嘲笑を響かせた。


「女の子がそんなに荷物持ったりして、大変じゃない?」


田口が言い、


「あれー? 俺たち男同士じゃなかったの?」


そう言って金井が肩を組んでくる。
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