天使の足跡
6
クラス全員分のノートと出席簿を抱えた癒威は、軽快に階段を上がっていた。
(早く三谷のところに戻らなくちゃ。さっきのパン、丹葉に全部食われてる気がするな)
そんなことを考えると、俄然、足に力がこもる。
(急がなきゃ)
2階と3階の踊り場に差し掛かった時、床に黒い影が入り込む。
段に落としていた視線を上げた。
そこに立ちはだかっていたのは、八杉をはじめとする3人組。
癒威は半歩退いた。
「八杉くん……?」
癒威の声には答えず、じりじりと歩み寄ってくる。
反射的に癒威も身を退くが、壁に背がついてしまう。
今にも胸倉を掴まれそうな距離に八杉が立ち、癒威のつま先から頭の先まで睨みつけた。
「聞いたぞ。お前、便所じゃいつも個室使ってんだって?」
3人は嘲笑を響かせた。
「女の子がそんなに荷物持ったりして、大変じゃない?」
田口が言い、
「あれー? 俺たち男同士じゃなかったの?」
そう言って金井が肩を組んでくる。