天使の足跡
三谷と丹葉は顔を見合せた。


口を割らない彼らに代わり、現場を目撃した他の生徒が説明する。


「走っていったぜ、なんかただ事じゃない雰囲気で。八杉たちに追い回されてるって感じだ」

「八杉くんたちに……!?」

「カン違いかもしれないけど、追いかけられてたよな」


三谷が躊躇いがちに頷いた。


「どっちに行ったの!?」


指を差した方向に加奈は走り出した。


「待てよ咲城! どうするつもりなんだ!?」


振り返った加奈は、三谷を睨んだ。

その強い眼差しに、ハッと口を閉ざす。


彼女が廊下を曲がって姿を消すまで、三谷は口を開けることができなかった。


止めるべきは咲城じゃない……

八杉を先に止めなければならなかったはずなのに……

なんて情けないのだろう──。

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