天使の足跡
「うるせえ! 女のくせに、黙れ!!」

「あんたこそ、男のくせに力しか取り柄ないの!? 今時、小学生でもこんな真似しないよ!」


加奈の登場で、癒威の上から八杉がどけた。

金井による拘束も解けるとすぐ、癒威は肩で息をしながら、苦し紛れに上体を起こした。


「お前、殴られたいらしいな」


八杉たちは加奈に歩み寄る。


「咲城さんに構うな!」


八杉は手の骨を鳴らし、首を左右に傾げた。


「女がしゃしゃり出てくんじゃねぇよ!!」


そして、拳を振り上げ、加奈はギュッと目を閉じた。


次の瞬間──



──パシッ‼



固く閉じた目を恐る恐る開くと、目の前に癒威がいて、八杉の拳をギリギリの所で押さえていた。


「てめえ……!」


互いに牽制していると、ドアから教科担任が飛び出した。

教師は八杉たちを最初に見るなり、鬼の形相で怒鳴りつけた。


「お前ら、何してる! さっさと戻れ!」

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