天使の足跡
それにつられるように、癒威も微笑んだ。


「ありがとう」







掃除終了とともに、放送で職員室に呼び出された。

担任の机の前に立つ。

担任は女の先生で、いつも厳しい言い方をしない人だ。

事情を聞こうとしている今も、苛立ちや面倒という類の表情は表れていない。


「まずは八杉くんたちの話を聞いたの。あなたが悪いことをしたという話は少しもなかった。
単にあなたのことを気に食わなかったと言っていたけど……何か心当たりある?」


顔を覗きこまれて、無意識的に目を逸らした。


「いえ、何も」

「そう……。生徒たちももうそんなに混乱していないみたいだし、それならいいのよ。
あなたは大丈夫?」

「……先生、八杉くんたちは、どうなるんですか……?」

「そうね、これから話し合うわ。何か思い当たることがあったら教えてね。どんな小さなことでもいいから」

「はい」


きっと八杉たちも、癒威を追い回したきっかけとなったあの話など、まともに教師たちに口外できなかったのだろう。

なんていったって、事の発端は三谷のトイレ事件だ。


当事者である癒威は、そのことなど知る由もなかったが。













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