天使の足跡
* * * * * *
その日の夕方、バイトも休んでまっすぐ家に帰った。
僕にはやらなければならないことがあった。
太田との約束の歌を、あの『無題』の歌を、完成させること。
太田はそんなこともう忘れているだろうけど、僕の中で約束は絶対だ。
何があっても、相手が覚えていなくても、守り通す。
それだけが取り柄だ。
自分で作ったスコアを取り出す。
この曲は僕がずっと大事に温めてきたものだから適当に作りたくはない。
それも、絶対だ。
メロディを書き入れた五線譜の下に歌詞を書いていく。
「どうしようかな……」
──そうだ。
太田と出会ったこの短期間に、いろんな心境の変化があった。
それを歌詞にしよう。
太田がこの部屋を出て行ってから、もう連絡は取り合っていない。
でも、それで僕らの関が終わったわけじゃない。