天使の足跡


──そして、
題名を書き加えた。



“TRUE BLUE”





 * * * * * *






部員たちがスプレーや汗を撒き散らしていった後の部室は、相変わらず熱気を保持していた。


その片隅で。

癒威がロッカーから紙切れを一枚取り出して出ていこうとしたところを、丹葉は見過ごさなかった。


「どこ行くの?」

「コーチのところ」


見向きもせずに癒威が出て行った後、三谷は黙ってタオルで顔を覆い、ベンチに腰掛けた。


午後の一件で落ち込んでいるのだ。


自分のくだらない想像のせいで八杉が暴れ、クラスが騒がしくなり、癒威は傷ついた。

おまけに、紙切れを持って部室を出て行ってしまった。

おそらくあれは退部届だ。


「止めなくていいの?」

「〜〜〜!」


顔を覆ったタオル越しに、何やらもごもご喋っている。


「は? 聞こえないよ」


いきなりタオルを床に叩きつけ、


「俺が引き止めたって!! ──俺が引き止めたって仕方ないんだ!! ……俺、何してんだろ!? 1年の頃からクラス一緒だったのに……庇(かば)ってやれなかった……!
サイテーだ俺……!!」


自分を責めるように吐き出された語尾はかすれていた。


丹葉はそっと傍に立って、うずくまっている三谷に言った。


「太田は知らないんだろ、俺たちの冗談が八杉に伝わったこと。学年のみんなだって、八杉を悪いと思ってるわけだし」

「けど……」
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