天使の足跡

「何でだよ、話が違う。昼飯おごってやったらナシだって言ったろ。……いや、そんな話をしに来たんじゃない。もっと、大事な話だ──」


拳を握って、目を逸らさずに話し出した。


「……俺のせいなんだ、お前が八杉に追いかけられたのは」

「……え?」

「俺、たぶん心のどっかでお前のこと妬んでたかもしれない。部活も勉強も、……咲城のことも、そう……何ひとつ勝てないし、俺たち良いライバルだし親友だと思ってたけど、……お前は俺に隠し事してる風だったし」


そう言った三谷と目が合うと、癒威は申し訳なさそうに眉を寄せた。


「でさ、太田は女なんじゃないかとか、丹葉にぼやいたんだ。ただ、お前のことバカにしたくて、ジョークのつもりだった。けど、八杉が後ろでそれを聞いてて……
八杉がお前のこと目の敵にしてるって知ってたのに、追いかけられてるのを見て知らん顔した……だから悪いのは俺なんだ、全部」


そして、「悪かった」と深く頭を下げる。


「そうだったんだ……。本当の事を言ってくれて、良かった、ありがとう。自分はもう大丈夫だから、三谷も気にしないで。そんな風に謝られると、調子狂っちゃうよ」


クスクス笑われて、三谷は不思議そうに顔を上げた。


「……あと、……その退部届……出すなよ」
< 113 / 152 >

この作品をシェア

pagetop