天使の足跡
癒威は、自分の手に持っていた紙切れに視線を落とした。
「……今度は自分が謝る番だ。ごめん、これは出すよ」
「だから何で──!? 理由を言えよ! 今まで一緒にやってきたろ!? 何で急に──」
「わかった」と癒威が言い、三谷の剣幕を遮った。
「三谷がそこまで言うなら、もう隠し事はナシだ。正直に言う。
……もうこれ以上走れない。今まで平気なフリしてたけど、本当は走り続けると地獄みたいに苦しかった。それでも三谷や丹葉とバスケをするのが、今までは唯一の楽しみだった。だけど、そろそろ限界だと思う。やりたくても、出来ないんだ。生まれつきの病気のせいなんだよ」
「貧血の事を言ってるのか……?」
丹葉が尋ねる。
癒威は、首を横に振った。
「貧血っていうのは、嘘だ。……三谷のカンは、当たってるよ。
……自分には半分、『女』が混ざってる。だから、身体の中のバランスが整ってなくて……そのせいなんだよ。声も三谷や丹葉みたいに男に成りきれてないし、体力も無い」