天使の足跡
第6章:傷だらけの翼






ギターを片手に、僕は何度も譜面と睨み合った。

歌詞と曲とがなかなか上手く重なり合わない。


改めてペンで書き加え、修正後の3小節前から弾き直す。


でも、どうしてもしっくりこない。

頭を掻き乱した。


「やっぱり愚作は愚作だなあー」


弱音を漏らして大きく伸びをし、床に転がった。

180度反転した世界。その視界の中に、冷蔵庫に貼り付けたカレンダーが入り込む。


気付けばもう、9月の半ば。


あと7か月もすれば僕は高校3年生になる。

そうしたら進路や模試に追われて、駄作でさえも手がける暇は許されない。



やれるとすれば今しかない。



勢いよく上体を起こし、「僕はできる子だ」と鞭撻(べんたつ)して譜面に向かう。




 * * * * * *




癒威は、テーブルにテキストを広げ勉強をしていた。


ジーンズのポケットで携帯電話が震えだす。

ベッドに座ってから応答した。
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