天使の足跡
『癒威、お前は──』
「父さんに何を言われても、この考えだけは変えられない。
もう、これでしか、生きていけないから……このままが、いい」
相手が意見する暇も与えず、そう続けた。
またしばらく父側からの声が途絶えた。
それからようやく、低く唸るような声で、思いもよらぬ返答が来る。
『好きなようにしなさい。それだけの自信があるなら、何も言わないよ』
呆気にとられた。
「本当に……?」
あの父がこんな台詞を言うなど、今まで想像もできなかった。
『もう学校で問題を起こすな。次の休みには帰って来い。必ず』
「分かった」
『それから──』
また間が空いたので、「なに?」と話を促す。
今度はすぐに声が返ってきた。
『体に気をつけてやりなさい』
そう言ってすぐ、プツリと切れた電話。
ツー、ツー、ツー。