天使の足跡

電話から聞こえるその音すらも呆気なさを延長させた。


頑固な父は、最後まで頑固だった。

それでも伝わる、家族の温かみ。


医者である父なら、生まれてすぐにどちらかに分ける手術だって施せたはずなのに、そうしなかった。


それに気がついて、父を疎んでばかりいた自分を恥じた。


初めから、人生にレールなんか敷かれていなかった……



──どちらか選ぶ道を、自分に残してくれたんだ──。



この決断をした時、きっと両親は苦悩したに違いなかった。

どう育て、どう生活に注意するべきか、自我を持ち始めた我が子に、どう受け入れさせるか……。

そんな愛情と苦悩の中で育ててくれた。

その余るほどの愛情に気付くまで、17年もかかっていたなんて。


ただ仕方ないと決めつけてばかりだった自分に気がついて、申し訳ないという思いを噛みしめた。


携帯電話を置いたら、ひとりでに涙が零れた。


自分は不幸なんかじゃなかった。


むしろ、幸せ者だ、と。














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