天使の足跡
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僕は歌う時、なるべく客と目を合わせないようにしている。
目を合わせると突然に緊張して、調子が狂ってしまうからだ。
遠くを走る車や人通りを見つめ、視界の隅に観客が入る程度で見た。
今までにないくらいの人の数が集まっていて、少し驚く。
その中に太田がいたかどうかなんて、全く分からない。
今、太田を探してしまったら、きっと緊張が襲って来てしまう。
だから僕は気にせず歌い続けた。
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癒威は、一時も拓也から目を離さなかった。
素通りして来る人たちの波に逆らい、掻き分けて、客の中に加わった。