天使の足跡

初めて譜面を見た時と、少しメロディが変った気がする。

けれども、爽やかで透明なのは、そのまま。


その歌に耳を澄ませた。


そうすると、槍沢拓也と出会ってからの出来事が頭の中を廻った。


出会った日の雨音や、部屋の匂い、
下校途中の夕焼け、一緒に眠る時の背中の温もり、
爽やかなギターの音色、つまらないケンカ、

涙の温度も、名前を呼ぶ時の声も──



──そして最後に浮かぶのは
変わらないその笑顔──。




『傷だらけの翼は
 ここに置いていって
 どうかこの歌を
 代わりに
 
 二つの色
 片方ずつの翼に持って
 生きていこうとも
 僕が知っている君に
 変わりはない──』


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