天使の足跡
3
「癒威!」
改札口で、若い男女が声をかけてきた。
「癒威! お前、大丈夫なのか?」
男性の方は、僕は覚えていた。
あの日、路地裏で初めて見かけた。
太田の兄だ。
彼よりも少し年上に見える女性の方は、たぶん姉だろう。
「話、父さんから聞いたよ」
太田は眉間に皺を寄せて、何でここにいるの、と憎まれ口を叩く。
「父さん、結構心配してたんだぞ。お前本当に──」
「余計なお世話だよ」
二人の間をすり抜けながらそう言い、待ちなさい癒威、と兄姉が叫びかけたが、太田は改札を通って行ってしまう。
「まったく……」
ふうと溜め息をついて笑う姉の顔が、太田とそっくりだ。